仕事・学習・技術導入が現場で立ち上がる条件を研究する 

 

組織は、仕事を与える装置ではない。 仕事が立ち上がるエコロジーである。 

北海道国立大学機構 小樽商科大学ビジネススクール 教授
筈井俊輔


 研修を実施しても学びがそのまま職場で活きるとは限らず、システムを入れても現場のやり方がひとりでに変わるわけではありません。問題の核は、それが誰の仕事として、どのような道具や関係、制度のなかで動き出すかにあります。

 組織論や批判的実在論、フィールドワークをもとに、私はこうした条件を研究してきました。講演や研究顧問、共同研究、ケース作成を通じて、組織が動く条件をご一緒に読み解いていければと思います。

主著『なぜ特異な仕事は生まれるのか?』(京都大学学術出版会)で第21回日本社会学会奨励賞(著書の部)を受賞。

このサイトでは、組織や仕事について、現場の実態に基づいた問いを扱っています。

核の問いは一つです。仕事・学習・技術導入が、現場でどう立ち上がるのか。この問いから、組織変革・人材育成・DX・海外拠点・インフラ構築まで、すべての論点がつながっています。

1. 仕事はいかに立ち上がるのか?

 組織のなかで行われている仕事は、すべて最初から設計され、与えられているわけではありません。現場では、状況を読み取り、他の人やモノとの関係を組み替えながら、新しい仕事がそのつど生まれています。
  組織は、仕事を与える装置である以前に、仕事が立ち上がるエコロジーです。この見方から、組織の現場を読み解いています。 

2. 学習・リスキリングはなぜ定着しないのか?

 研修を実施しても、学びが個人の経験で終わってしまうことがあります。同じ研修が、別の組織では職場の行動や組織の成果にまでつながることもあります。
 この違いは、研修の中身の良し悪しだけでは決まりません。戦略との接続、求められる役割やスキルの具体化、学習から業務までの設計、学習文化と推進体制、そして測定と活用。この五つをSRACEモデルとして整理し、人材育成・リスキリングを経営の論点として捉える枠組みを提示しました。

3. 技術導入・DXはなぜ根づかないのか?

 新しい技術や制度を導入しただけでは、現場は変わりません。技術の導入は、現場に新しい仕事を生むこともあれば、期待された変化が起こらないまま形骸化することもあります。
 重要なのは、技術そのものの性能ではありません。その技術が、既存の仕事の流れ、役割、空間、判断の仕方とどう関わるか。DXや新制度の導入を、流行や合言葉としてではなく、現場における仕事の再編として捉えること。これがこのテーマの中心にあります。

4. 長く続く事業やインフラは、どのように支えられるのか?

 社会を支える仕組みのなかには、短期的な成果では測れないものがあります。地域医療、科学プロジェクト、公共インフラ、長期継続事業。こうした取り組みでは、日々の業務の反復だけでなく、その背後にある構造や制度や関係性が、長い時間のなかで組み替わっていきます。
 人が変わっても、制度が揺れても、環境が変わっても、それでも続くものは何か。組織の継続を、単なる惰性ではなく、構造の問題として捉えています。

5. 海外拠点の現地化は、なぜ難しいのか?

 海外子会社や現地法人では、日本本社の方針と現地の実践が噛み合わないことがあります。そのとき問われるのは、文化の違いを抽象的に語ることではなく、誰がどのように意思決定し、どのような関係のなかで主体化が進むのか、という具体的な過程です。
 現地で仕事が立ち上がるとはどういうことか。この問いは、海外拠点の問題であると同時に、組織における仕事と主体性の問題でもあります。

 このような課題に向き合っています 

 

  • 研修を実施しても、職場の行動に結びつかない 。
  • DXや制度変更が、現場に根づく前に形骸化する 。
  • 役割やスキルの設計が、部門ごとにばらばらに進んでいる。 
  • 海外拠点や現地法人で、日本流の運営が現地と噛み合わない。 
  • 現場で既に動いている暗黙の実践を、外部に説明できる資産に編集したい。 


「何を導入するか」ではなく、「なぜ立ち上がるのか、なぜ立ち上がらないのか」から考える。これがこの私の基本姿勢です。

現場実装の組織論辞書

仕事・学習・技術導入が立ち上がる条件を読むための語彙 

 研究テーマを読むための主要な語彙を、短い辞書として整理しています。仕事の創発、実装条件、社会物質性、組織ルーチン、SRACEモデルといった用語は、一般的な経営学の用語解説とは性格を異にし、現場で何かが立ち上がる、あるいは立ち上がらない条件を読み解くために用いる言葉です。

 【組織論辞書を読む】

研究と実務の接点 

 研究と実務は、別々の世界ではなく、同じ問いの異なる表現です。抽象的に離れた研究でもなく、その場限りの経験知でもない、第三の道をつくることがこのサイトの目的です。 

研究にもとづく関わり方として、三つの形を案内しています。 

講演・ワークショップ

 組織や仕事の見方を整理し、参加者が自分たちの課題を言い換えられるような話題提供を行います。経営者・管理職向けの社内セミナー、業界団体の研修、官公庁職員の研修、大学院での講義などに対応しています。 

 研究顧問

 新技術導入、制度変更、人材育成、海外拠点運営、長期継続事業などについて、現場実装の条件を定例で点検し、再設計していく関係です。単発の診断ではなく、組織の変化と並走しながら議論します。 

 共同研究・ケース作成

 現場で起きていることを、研究や教育に耐える形で言語化し、共有可能な知として残す仕事です。研究者の視点から現場を記述することで、組織にとっても、教育にとっても、再利用できる資産になります。 

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【共同研究・ケース作成について見る 】

主な著作・研究業績 

 研究全体の出発点は、主著『なぜ特異な仕事は生まれるのか?』(京都大学学術出版会、2021年)です。仕事を「与えられるもの」ではなく、「人と人、人とモノ、職場の設計のなかから立ち上がるもの」として捉え直しました。

 近年は、この問いをサテライトオフィス、海外拠点の現地化、科学インフラ、人材育成・リスキリング、エッセンシャルワーク・不可視労働へと広げています。

 業績一覧は researchmap にまとめています。初めての方は、単著、主要論文、白書・ケースの順で見ていただくと全体像がつかみやすいと思います。

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